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「優花は、本命チョコはあげないの?」
「ううん。もう、渡したよ」
「ウソ! 優花って好きな人がいたんだ! 誰々!?」
――さっき、あげたじゃん。ねえ、華。わたし、友チョコだなんて一言もいっていないよ?
思ったけれど、口にはしない。
親友としてチョコ作りを手伝ったのに、今更、そんなことを言うのはズルいもんね。
ずっと前から、分かっていた。
この想いは届かないって。
痛いほどに知っているんだ。わたしは、三角くんに恋をする華を、誰よりも近くで見てきたから。
叶わなくてもいい。
どんな形であっても傍にいたいと願った。
だから、どうしてわたしは女の子なんだろうと悩みながら、女の子であることを利用したんだ。
利用したからにはさ、途中で投げ出すのはルール違反だよね。
「華は、知らなくていいよ」
「なにそれ! あたしは散々相談に乗ってもらってるのに水臭いよ〜!」
笑え。
笑うんだ。
親友を、演じきれ。
「……っ。そんなことよりも、さ。華、明日がんばってね」
「そういえば、もう明日なんだよね!! どーしよーっ、めちゃめちゃ緊張する……」
泣きそうな顔なんて、するな。
これは、世界で一番幸せな片想いをしていた代償なんだから。
【完】
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