冷たい君のこえ

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「……聞こえて、いたの?」 「聞こえてるよ。だからそんなに耳元で叫ばないでね。痛いから」  もう一人の語り手――小笠原木葉は、きょとんとして刑事を見た。  刑事はあっちこっちに毛先が跳ねた茶色みの強い髪を掻きながら、改めて木野下弘行が去っていった方向を見やる。 「果たしてどこからどこまでがでまかせなのかわかったもんじゃないな」  昨日、小笠原木葉がこの公園で死んでいるのが発見された。死体の様子から扼殺と断定。犯行時間は前日の夜と見られているが、目撃者はなく、捜査は難航しそうだというのが警察の現在の見立てであった。  同棲相手である木野下弘行が怪しまれているのは確かだが、誰に対してもあの調子らしいというのがこの刑事が聞かされていた内容であった。 「ねえ、どうしてキノシタさんが君を殺したのかはわかる?」 「わからない。……そんなの、わたしにはわからないよ」  すとんとベンチに腰掛けなおした木葉は透けた両腕で己の体を抱く。ぼやけた輪郭ではあるが、刑事の目は確かにそれを捉えている。木葉は戸惑いを隠せないといった様子で刑事を見上げていたが、不意に声を上げた。 「でも、でも! わたしがヒロユキに殺されたのは間違いないの! 刑事さん、お願い! ヒロユキを捕まえて! あの人の真意が聞きたいの!」
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