冷たい君のこえ

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「とはいってもだね、君の言うことは調書に載せられないし、俺の妄言と言われてしまえばそれまでだ。実際、こうして喋っている君も俺の妄想かもしれないわけでね」 「わたし、妄想なんかじゃ……」 「君の声が俺以外に届かない以上、誰も君の実在を保証はしてくれないってことさ」  刑事は大げさに手をひらひらさせてみせる。その様子をどう捉えたのか、木葉はしゅんと肩を落としてしまう。それでも、それでも、じっと、涙ぐんだ目で刑事を見上げるのだ。 「わたし。諦めないから。わたしの声を聞き届けてもらえるまで、絶対に諦めない」 「そうだね。俺も、諦めたつもりはないよ」 「……え?」 「俺が君の言葉を信じて捜査するのは自由だからね」  その言葉に、木葉の表情が明るくなる。ただ、それと同時に不思議そうに首を傾げるのだ。 「でも、どうやって信じてもらうの?」 「なーに、色々やりようはあるさ。今までもそうやって仕事してきたからね、俺は」  その言葉を木葉が信じるか信じないかは関係ない。刑事はそんなことを思い、朽葉色の目を細めて笑ってみせながらも。 「そう、起こってしまった事件をなかったことにはできないけれど」  コートの裾を翻し、厳かに、宣言する。 「君のような人をなかったことにしないために、警察(俺たち)はいるのさ」
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