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こう言う時に限って、気づかないでよ。
「なんでもないです、失礼しました」
慌ててゼミ室を出ようと後ずさる。そんな私を追いかけて、先生は扉を閉めてしまった。
「いつもの勢いはどこへ行ったんですか?」
すごく意地悪そうな微笑みに、不覚にも胸の奥が潤んでしまった。瞳からポロポロと溢れてくる涙を私は制御できない。
先生の息がおでこにかかるのが、悲しいやら嬉しいやらで、感情が追いつかない。
「受け取ってくれます?」
「考えておきましょう。とりあえず、座ってください」
ぽんぽんっと軽く叩かれた頭が熱い。いつも塩対応なくせに、こう言う時だけ優しいのはずるい。ひどい。
言われた通りにするのが癪で扉にぴたりとくっついたまま立ち止まる。
「今日は変ですよ君」
「先生、おモテになるんですね。意地悪クソメガネなのに」
「口が悪いですね。別にモテませんよ君以外に」
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