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私の前で立ちはだかる先生を見上げれば、むすっとした顔で返される。
「困ったな」
眉毛をハの字にして本当に困った顔をしてる。困らせてると言うのに、嬉しくてたまらない私はきっとおかしい。
先生を見上げたまま、涙もそのままに笑えば先生は悪戯っぽく口角を上げた。
気づけば先生との距離は0センチ。軽く触れるだけのキス。
「足りませんか?」
「何をしてるんですか?」
「バレンタインなので。ほら、歌もあるでしょ」
くくくと揺れる喉仏に噛みつきたいなんて、混乱してるんだ私。
「で、それ早く渡してくれますか?」
「嫌です」
「往生際が悪いな。もう一回?」
先生の腕が私の頬を掠めて、扉をドンっと押す。いわゆる、壁ドンじゃない?
「先生?」
冗談だと言わんばかりの笑顔で、いつもはそんな笑顔しないのに!
もう一度ゆっくりキス。
「満足ですか?」
「はい」
「じゃあ、紙袋渡してください」
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