1 どうして俺が魔王なの?

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その男は、俺を奥の方にある魔王の部屋へと連れていくと俺を豪華なソファへと座らせ暖かいお茶を入れ、そのカップを俺に手渡した。 「どうぞ、お飲みください。落ち着きますから」 「はぁ」 俺は、ビクビクしながらそのお茶を受け取った。 「ありがとう」 その執事服の男は、奇妙な表情を浮かべたが、すぐに答えた。 「どういたしまして」 俺は、その白い陶器のカップの中のお茶をずずっと啜った。お茶は、甘い香りがしていて、すごくうまかった。 俺は、それを一気に飲み干すと、カップをソファの前の美しい飾り彫りの施されたアンティーク調のテーブルへと置き、溜め息をついた。 その男は、なんという名前だったか。 俺は、少し、悩んでから言った。 「ビスコ・・」 「ヴィスコンティ、です」 ヴィスコンティは、俺の方を見つめて静かにきいた。 「で?あなたは、いったい誰なんですか?」 「お、俺?」 俺は、ヴィスコンティを窺うように上目使いに見上げて答えた。 「俺は、竹内 ハジメ、だ」 「タケウチ ハジメ?」 ヴィスコンティは、首を傾げた。 「変わった名前ですね」 「そうかな」 俺は、答えた。 「ありふれた普通の名前だと思うけど」 「あなたが魔王様の体に入っているということは、魔王様は、どこにおられるのでしょうか?」 ヴィスコンティにきかれて、俺は、頭を振った。 「わからない」 「あなたは、本当に魔王様では、ないのですね?」 ヴィスコンティは、溜め息をついた。 「そのお姿で、その口で、そんなことを言われても信じることができかねますが」 はい? 俺は、はたと自分の両手を見つめた。 抜けるように白い、美しい手。 「これは、俺の手じゃない!」 「はい?」 ヴィスコンティは、俺に鏡を見せた。 「これが、今のあなたの姿です、ハジメ」 俺は、鏡の中から俺を見つめ返している、その見知らぬ男の顔をじっと見つめた。 長い黒髪に赤い瞳、白い肌。見たこともないような美しい顔に、赤い唇。 まるで、女と見間違えるような美しい男だった。 マジか? これなら、アイドルにだってなれるぞ。 いや、別になりたかねぇけどな。 いったい、どういうこと?
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