31 なんかの奇跡がおきました。

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31 なんかの奇跡がおきました。

俺とイオルグとアイリは、無言で湯に浸かっていた。 アイリは、俺とイオルグを窺いながら、甘い吐息を漏らしたりしていたが俺とイオルグは、完ムシしてただ真っ正面を見つめていた。 この女に関わってはいけない。 それが俺たちの合言葉だった。 ずっと俺たちが無視していたから、アイリは、苛立ってきたのかいきなり隣にいたイオルグの肩にしなだれかかってきた。 「ごめんなさい、ちょっとふらついちゃって」 「いえ、大丈夫です」 イオルグは、なぜか敬語になっていた。 「それじゃ、俺は、もう失礼します。じゃ、兄さん、お先に」 「ちょっと、イオルグ、待って」 俺を置いて去っていくイオルグの後を追おうとした俺の腕をアイリが掴んで引き留めた。 「待って!ハジメ」 アイリは、俺の腕にしがみついたまま言った。 あ、当たってるって! 俺は、かぁっと顔が熱くなっていた。 一刻も早く風呂から出たい。 だけど、アイリは、俺の腕を掴んで離そうとはしなかった。 仕方なく、俺は、もう一度、湯船の中へと戻った。 「うふふ、ハジメ、かわいいわね。あなた、いくつ?」 アイリがきいてきたので、俺は、小声でもごもごと答えた。 「16です」 「16才!若いわね」 アイリは、嬉しげに言った。 「私は、いくつだと思う?」 「20・・才ぐらい?」 俺が言うと、アイリは、にんまりと笑った。 「うん、それぐらいかな。ねぇ、ハジメは、女の子と付き合ったことあるの?」 「いえ、ありません」 俺が答えると、アイリは、にやりと笑った。 「じゃあ、私があなたの初めての女になってあげてもいいわよ、ハジメ」 はい? 俺は、背筋がぞわぞわとしてきた。 この人、何を企んでるの? 「いえ、結構です」
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