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気づいたとき、俺は、鋼鉄の玉座に腰かけていた。
あれ?
俺は、さっきまで学校の教室の自分の席に腰かけていた筈なのに。
なんで、俺、こんなとこにいるの?
俺は、腰かけたまま周囲を見回した。
薄暗い僅かな光に照らされた広間の最上段に据えられた玉座に座った俺を取り囲むように何かが蠢いていた。
目を凝らすと、それは、鬼の群れだった。
俺は、鬼を見たことはないが、たぶん、地獄の鬼というものがいるなら、こいつらのことに違いない。
暗い中に赤く光る瞳に、牙の突き出した左右に裂けた巨大な口。額からはねじ曲がった角が2本はえていた。
マジか。
俺は、心臓が猫並みにどくどく打ち出すのを感じていた。
なんか、ここ、ヤバい!
どこかに逃げ道がないかとキョロキョロしていると不意に、誰かが声をかけてきた。
「どうされましたか?魔王様」
はい?
俺は、声の方に振り向いた。
そこには、気の弱い子供なら失禁しながら泣き出しそうな恐ろしい形相の鬼、鬼の中の鬼というような奴が立っていた。
そいつは、俺のことを覗き込んできた。
なんか、鎧っぽいものを身に付けているその鬼は、どうやらそこにいる鬼たちのリーダーらしき鬼のようだった。
「あ、あの・・」
俺は、口ごもった。
なんか、下手なことを言うと、殺されそうな予感がする。
俺の頬を冷たい汗が流れ落ちていく。
「あの・・ここ、は・・」
俺は、小声で言った。鬼は、ドスのきいた声で聞き返した。
「なんですか?」
「あの・・ここ、は、どこ・・?」
「はい?」
鬼は、一瞬、眉をひそめたがすぐに答えた。
「ここは、魔王の杜ダンジョンの最深部にあるあなたの城ですが、それがどうかされましたか?」
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