【お】大きな手のひらがあたたかい

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【お】大きな手のひらがあたたかい

 軽やかな祭囃子の中を歩いていて、龍の形の見事な飴細工がふと目についた。大久保が何気なく足を止めて見入っていると、気付いた西郷が戻ってきた。 「正助どん」  相変わらずの茫洋とした風情で、二歳年長の友は大久保の名を呼ぶ。 「はぐれっで」  言いながらぎゅっと手を握られ、もうそんな年でもあるまいにと、大久保はつい赤面する。どう応じたらよいのか判らずに躊躇っていると、西郷は真面目な顔で尋ねた。 「飴ば欲しいが?」 「………吉さ」  年下とはいえ、一体この男は、私をいくつだと思っているのだろうか。  欲しいのなら買ってやろうかと、懐の小銭を探りそうな親友に、大久保は苦笑する以外になかった。      ☆ 西郷&大久保。仲良し(笑)
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