かくれんぼ※

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「実は‥ハワード公爵の家にお招きして頂いた際、ゲームの賞杯としてこんなものを用意して下さったんです。」 そう言って取り出されたのは綺麗にラッピングされたプレゼント用紙。 「なんだこれ?」 リュカが不思議そうにその包みを開けると。 「な、」 「わ。」 「・・・んだこれ」 そこにはうちの公邸で着用されるメイド服が。 気になるのは成人女性・・・いや、成人男性が着るにはかなり小さいような。 「これを兄様に着てほしいのです。」 「僕?!」 リュカは渋い顔をし対するルイはキラキラとした眼差しを向けられる。 僕はポカンとしたまま暫く思考が停止していたが、すぐ我に返り慌ててルイを説得する。 「無理だよ。僕には似合わないし、着方も知らない。他なら聞くから・・ね?」 「着方なら僕がレクチャーします!」 「・・・でも、、」 「せっかくヒューズ様が用意してくださったのに・・・」 ルイの瞳にはだんだん涙が浮かんでくる。 それを必死にこぼれないように耐える姿がなんとも痛々しかった。 リュカはというと、着てみても良いんじゃねと口にしながら嫌な笑みを浮かべている。この状況を完全に楽しんでるようだった。 「・・・分かった。着るよ。」 僕は項垂れながら了承するしかなかった。 ※ 「兄様お似合いです!」 「そ、そう?」 股がスースーするような違和感をレイは覚える。 スカートは膝くらいでそこまで短いわけではないが気持ちは落ち着かない。 頭に嵌めたフリル満点のカチューシャもすぐに外してしまいたいくらいだ。 「この恥じらうような瞳・・。」 「え?」 「背中には兄様のためにあるかのような可愛らしいリボン。」 「確かにリボンは可愛いけど・・」 「スカートで見えないけど太ももは絶対むちっとしてそうな柔肌がそそられる。」 「見ないで?!」 「・・・中身おっさんでも入ってるのか?」 興奮するルイに若干涙目の僕。ルイに冷静なツッコミを入れながらも何故か視線を僕に向けたままのリュカ。 今の状況はまさに地獄だったと思う。 誰かこの状況を何とかしてくれと、そう思ってしまったのがいけなかった。 「good morning!!子どもたちよ。君たちに朗報が・・あ・・る」 「と、父様・・・」 突然部屋のドアを開けられ父が登場した。 すぐに僕と目が合い頭から爪先まで見た後、驚いたように目を開く。 ああ。終わった。なぜこのタイミングで父様が。執事やメイドさんならまだしもよりにもよって・・・! 「‥レイ?その格‥好」 「あ、、違う父様!!これには訳が!!」 兎に角、この誤解を解かなければ! 「レイの趣味‥か。僕は大歓迎さ!!」 「違いますが?!」 「そんなことより」 「そんなこより?!!」 僕はこの誤解をとくことが何より重要なんですが、と思ったが父様が何か言いたそうにしていたため口には出せず、素直に父様の言葉に耳を傾けることにした。 「もうすぐレイが7歳になる誕生日にお披露目をすることにした。正式にお前を跡取りだと紹介する。」 「お披露目‥ですか?」 「そうだ。簡単に言えばパーティーだな。今後、作法やダンスの練習を行ってもらう。リュカは警護の強化のため別部屋で修行だ。」 うわわ、待って凄く重大なことじゃん。 パーティーって、ダンスや食事のマナーが見られる。食事なら物心ついたときから訓練してたからまだしもダンスなんて。 「さっそくだが練習に取り掛かってもらう。レッスン室に案内しよう。本来、こういうは役目は執事に任せるべきだがな。愛する息子が一生懸命ダンスを練習する姿を近くで見たいものだろ?」 ”愛する息子”その言葉を聞くだけで心がムズムズしてくる。 「お披露目パーティーか・・」 頑張ろう。僕ができることを全力で。そう心に誓った。 「だからレイのメイド服はもうちょっと見ていたいけど、着替えよっか」 レイも二人にもっとかわいい姿を見てもらいたかったんだろうけど、と何故か僕が二人に見せたがってたように言われ、僕の趣味ではないと全力で否定したがなぜか信じてもらえなかった。 なぜ‥。 そんなこんなでお披露目に向けての猛練習が始まった。 礼儀や作法はアダム先生が担当し、ダンス担当はいかにもシン〇レラの継母みたいな人が登場し厳しく指導された。 先生は僕のダンスを見て、筋は良くリズム感もいいと褒めて下さったが、見るからに自信なさげな姿勢は止めなさいと言われた。言ってることは分かってるのだが、癖になっていてこれがなかなか直すのが難しい。それでも父様や母様が応援しに来る姿や、練習に付き合ってくれるルイや僕のために護衛の指導を受けてるリュカのためにも頑張ろうと思えた。 「もっと背筋を伸ばしなさい」 「はい!」 「顎は引いて視線は遠く、真っ直ぐに」 「はい」 「声が小さいですわよ!」 「は、はい!」 もっと自分に自信を持って、ルーズベルト家の恥にならないように。 「兄様に負けないように僕も頑張らなくちゃ」 「はぁ、訓練なんてだりぃ。‥‥‥もう一回お願いします。」 二人のためにも頑張ろう。 こうして厳しい練習は過ぎていった。 ※ 「いよいよですわね。坊っちゃま、よくここまで頑張りました。」 「ありがとうございます。」 あっという間に練習期間は過ぎ去り、気づけば本番当日。 「お母さん、楽しみすぎてわくわくしちゃう。3人の衣装決めるの楽しかったわぁ~」 「あはは。。まさか五時間かけると思いませんでした。」 「そりゃ可愛い息子のお披露目だもの。慎重に決めないとね。」 僕の衣装は白いシャツに袖をカフスで止め、紺色のウエストコートを着用している。 女の子が着るようなドレスじゃなくて本当に良かった。 「似合ってます兄様。まるで天から舞い降りた女神のようです。」 「‥何があっても守ってやるから安心しろ」 「ありがとうルイ、リュカ。行ってきます。」 「レイ・ルーズベルト公爵がご入来されます。」 ラッパみたいな金管楽器の音が聞こえる。 僕は背筋を伸ばし、堂々とした足取りで歩き出した。
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