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早朝、僕は肩に違和感を覚えて目が覚めた。
リュカに昨夜、吸血されたからだと初めは思ったがそれとはまた別の違和感というか。
例えるなら、昔公園で出会った犬が駆け寄ってペロペロされた時の感触に似ている。
でも、それよりかはねっとりとしたヘビのような執拗な感じがするけど。
「‥‥‥‥‥‥ルイ?」
「‥おはよう、起きた?」
「な、ななな舐めっ。なに、してるの?!」
「リュカ(害虫)に刺されたみたいだから消毒。」
リュカに刺された?と頭にハテナマークを浮かべたがすぐに昨日の夜ベットで吸血されたことを思い出す。そのことを指してるのだとすれば・・。
「まさか昨日の会話聞いてたの!?」
一体どこまで聞いてたんだろうか。
「随分、兄様とリュカが仲良くなったようで少し寂しいな。僕だけ除け者にして。」
「違う!」
「‥ほんと?」
疑いの目を向けてくるルイ。
確かに昨日はリュカとの距離が少し縮まったかなとは思ったが、ルイを除け者にしようなんて微塵も思ってない。
「リュカは吸血鬼だから定期的に血を吸わないとお腹が空くでしょ?だから僕は食事を提供しただけだよ。」
「・・・・嘘つき」
「え?」
「それだけじゃないくせに」
「ルイ?」
「僕の知らないところでなんかあったんでしょ?カクレンボした時から様子おかしかったもん!」
ルイは周りをよく観察している。
それはとても良いことだが、敏感になりすぎて物事を悪い方向に捉える癖がある。それは生まれた時から得るはずだった愛情が不足からくる自己肯定感の低さが原因だろう。僕が何より経験してるから分かる。
「ルイ、聞いて」
「じゃあ教えてよ!カクレンボで僕が見つかる前に何があったのかを」
「え!?」
ルイが見つかる前にあったことって・・・。
知らない人から押し倒されて、股間の臭いを嗅がれて舐められて・・・って言えない。6歳児に聞かせる内容じゃない!!
僕が襲われてリュカが助けてくれました・・・なんて話すとルイが心配するだろうし。かと言って適当に嘘ついても僕の演技力ではまたすぐにばれそうだ。
助けを求めるように思わず隣に居座ってたリュカを見る。
するとリュカは意外にも任せろというように頷いてみせた。
ルイは怪訝そうな顔で様子をうかがってる。
「ルイ、俺はレイに仕える執事だ。仕えるならば当然レイは俺に報酬を支払う義務がある。」
「・・・突然なに?」
ルイ眉間にしわを寄せ不機嫌そうにしてる。
僕は再び頭にハテナマークを浮かべながら話を聞いた。
「つまりだ。レイには定期的に体で支払ってもらうようカクレンボの時に交渉したんだ」
「ちょ、言い方ぁ!!」
しかもそんな約束してないし!
「だから、体で支払うって言っても結局は吸血させてもらうだけでしょ?兄様は吸血くらい平気だろうし、僕は嫌だけど・・・カクレンボの時に様子がおかしかった理由にはならないよ」
「だから言っただろ体で支払ってもらう。俺の牙には催淫効果があるのは知ってるよな。吸血は吸血させてくれる相手が発情してくれてた方が血が甘いんだよ」
「な、なななななに言ってるんだ!」
「気づいたか?つまりカクレンボの時、俺たちの距離が近く感じたのは・・」
「ああああ、あんなことやこんなことを、兄様に・・・きょ、、強要したと?!」
「・・昨夜のレイの血は旨かったなぁ」
ルイの顔がみるみる真っ赤になったかと思いきや真っ青になっていく。
そんなルイをニヤニヤしながら眺めるリュカ。
ルイは一体、何を想像してるのだろうか。
「リュカのケダモノ!僕の兄様に近づくなぁ!」
「良いだろ別に、食事は三大欲求の一つ。美味しい食事を堪能したいという欲求を俺は満たしただけだぜ。」
「別の対象でやれ!」
「えぇぇぇぇ・・じゃあお前?」
「気色悪い冗談は止めろ!!」
想像でもしてしまったのか、嗚咽を漏らすルイに対し、リュカは僕に向かってルイに気づかれないよう親指を立てた。
僕はどんな反応をしていいか分からず苦笑いを返す。
「リュカがキモイことは分かったけど」
「おい、今なんつった?」
リュカが目で人を殺しそうな勢いでガン飛ばすがルイはなんともないように僕の方を向き胸の前で両手を組み上目遣いする。
「僕も兄様にお願いしていい?」
「”も”ってなんだ。まるで俺もなんかおねだりしたみたいじゃねーか。」
「してるじゃん。吸血させてって。」
「それは執事の報酬として」
「じゃあ僕はいつも勉強頑張ってるご褒美が欲しいです!」
ああいえばこういうなとでも言うようにリュカは呆れた眼差しを送る。
「それはあたりまえだろ、現にレイだって勉強頑張って・・」
「それなら兄様のご褒美も言ってください!僕が叶えます!!」
リュカは我慢できないというように僕の方に目をやる。それに苦笑いしながらルイの方に目線を会わせた。
ルイも子どもなりに色々と頑張ってたし、ここは(中身が)大人の僕がご褒美あげないとだよね。
「ええっと。とりあえずルイの要望を聞こっか。何が欲しいの?」
「欲しいとかじゃありません。兄様にやってほしいことがあるんです。」
「やってほしいこと?」
「実は‥‥。」
僕はその要望を聞いてしまったことを、後々後悔することになる。
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