795人が本棚に入れています
本棚に追加
「いやぁ・・・お兄ちゃん。あああああぁぁぁ。」
零斗が死んだ。
目の前には人間だったとは到底思えないほどの肉の塊と化した零斗の残骸。
間違いなく即死だろう。
美来は放心状態で壊れたようにお兄ちゃんとぶつぶつ繰り返している。
さすがの俺も動揺が隠し切れなかった。
むせ返そうな血の匂いが耐えられず、思わず顔を手で覆う。
なぜだ。零斗はなぜこんなバカなことを?
知識はずば抜けて良いというわけではないが、そこら辺の高校生よりかは優秀な方だ。考えるより先に動くタイプではなくどちらかと言えば理性で動くタイプだと言うのに。
「は、はははははは。ははは。」
頬に温かいものが伝う。
こんなにも愛してやったというのに何故こんなバカなことをしたのか。
考えても分からない。
自分の無能さに呆れたか。だがお前は無能でも俺の実験に役立ち生きがいを感じてたはずだろ?
美来もあんなに懐いていたのに。
‥‥まだ愛情表現が足りてなかったというのか。
なにかが抜け落ちたような、そんな脱力感が全身を襲う。
気がつけば救急車のサイレンのような音が聞こえてきた。
このまま零斗のいない生活を送るのか。
否、そんな世界など価値のない。
「‥‥‥‥‥‥お兄ぃ。」
どうやら美来も同じ考えのようだ。
パンパンに腫れ上がったその目には、何も映ってない。
「ああ。いくか。」
俺達は手を繋いで車道へと向かった。
今度は絶対に逃がさないよう、手首を鎖で繋げておかないとな。
最初のコメントを投稿しよう!