どうせなら幽霊を見たいと思っているのです

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 先輩が抱えている霊問題の解決に、全力を尽くすという条件で、これから幽霊がいる場所へ連れて行ってもらうことになりました。  今、私は先輩の後ろを大人しくついて行っております。 「森山先輩! あの……」 「悪いけど今忙しい」  図書館への道のり。  「んで? お前にはどんなのが見えるわけ?」  私が弟子入りをお願いした先輩は、どうやら森山先輩と言うらしいです。 「幽霊の影響を受けている人が分かります」 「は? なんだそれ。まあいいけど、ちゃんと除霊手伝えよな」  先輩の近くにいたら幽霊が見えるかもしれません。  それに、どうやら先輩は除霊もできるようです!  除霊も習えるかもしれません。  でも、 「森山君! ちょっと話が」 「忙しい」  これで何人目でしょう。  多くの女の子が、森山師匠に声をかけています。  しかし森山師匠は、話も聞かずにその女の子たちをあしらってしまうのです。 「冷たすぎませんか師匠。可哀想です」 「師匠って呼ぶんじゃねえ。この能天気が」  ご機嫌斜めのようです。 「普段遊んでやってんだ。ちょっとぐらい突き放したって問題ねえよ」  根暗な印象を思わせる前髪に、一切着崩していない制服。  静かな性格の優等生だとばかり思っていましたが、私の予想に反して、彼は中々の遊び人のようです。 「それにしても寒いです。師匠、いつもはどうやって除霊をしているのですか?」 「馬鹿! でかい声でそういうこと言うんじゃねえよ。あと師匠じゃねえ!」  尚も森山先輩からは冷気が尽きることなく放出されています。  もしかしたら私が見えていないだけで、今も彼の近くに霊がいるのかもしれません。 「森山師匠、いえ、先輩。つかぬことをお聞きしますが、今近くに幽霊がいるのですか?」  私は興奮を抑えられずにそう聞いてしまいました。  森山先輩は煩わしそうにため息を吐きます。 「どこにでもいるんだよ。幽霊ってのは」 「そうなのですね! では今も先輩の肩に!?」 「煩い煩い煩い。ほんと黙れ」  周りの生徒が不思議そうに私達を振り返ります。  会話の内容も原因かもしれませんが、森山先輩の存在も注目を集めているように感じます。 「お前と話してるといつも以上に人の目を惹いちまう」  突然足を止め、先輩は怒りの表情を私に向けました。 「校門で待ってろ。俺は図書館寄ってからいく」 「それぐらいなら付き合いますよ」 「お前と一緒に歩きたくないんだよ。察せ」  仕方なく私は一人校門へと向かいました。  下校していく生徒達。  結構な人数が冷気を放っています。どれも森山先輩ほどではありませんが。 「ちょっとあんた」  突然、茶髪の女子生徒に声をかけられました。険悪な雰囲気を醸し出しています。  一年生はきっと皆下校しているので、この方は先輩なのでしょう。 「あんたさあ、森山先輩の妹か何かなわけ?」  あ、この流れは知っています。  この人はきっと森山先輩の彼女でしょう。あんだけイケメンなら彼女ぐらいいますよね。迂闊でした。 「次は私が森山先輩に告白する番なのよ。あんた一年? 今回は見逃してあげるけど、今後一切近づかないでよね」  彼女ではないようです。  でも、一体何のことを言っているのやら。 「おい」 「も、森山先輩!?」  ご本人登場です。 「変なルール勝手に作って盛り上がんないでくんない? 迷惑なんだけど」  森山先輩は冷めた目で茶髪先輩を見下ろしています。  茶髪先輩は顔を真っ赤にして唇を震わせました。 「だ、だって仕方ないじゃないですか。この学校の暗黙のルールですよ。先輩が、モテ過ぎるのがいけないんです」  先程とは打って変わり、随分としおらしくなってしまいました。 「だから何? 結局俺が不快に思ってたら意味ないのに」  一体どんなルールなのでしょう。 「……失礼します」  俯き、足早に私の前から去ろうとする茶髪先輩。 「次がつかえてんじゃないの? 今告白してけば?」  それを、森山先輩は辛辣な言葉で引き止めます。  茶髪先輩は一度止まって振り返り、悔しそうに顔を歪ませて走り去っていきました。 「ひっどい人ですね」  思わず本音が漏れてしまいます。 「本人そっちのけで訳分かんないルール作られてんだぞ? 俺に同情しろ。それでなくても毎日嫌なもん目にしてんだ」  先輩は私を追い越して歩き始めました。 「森山先輩。どこへ?」 「俺ん家。俺の部屋に住みついてんだよ」  どうやらこれから先輩の家にお邪魔できるらしいです。そう。霊が見える人の家に。 「楽しみです! 幽霊!」 「黙れ」  私は注目を浴びながらも森山先輩と共に下校しました。   
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