冷たいあの人

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酔っぱらってイケメンの家に泊まった週明けの月曜、大学にいくと人生にあまり関わりのなかった部類の女達が待ち構えていた。 大学の教室で。 中に入ると数人の女が私の前に現れた。 「なんか美のオーラで目がチカチカする」 「あんた、金曜の夜、飲み会の途中で奏と抜けたんだってね」 「へっ?奏?」 「とぼけないでよ、二条奏だよ」 「あっ…(イケメン)二条君…すみません、フルネームまでは知りませんでした」 「知らないフリしたって無駄なんだからね!」 「…(別れた)彼氏の友人で有名な人だから知ってはいたけど…そんなに仲良くは…」 「嘘つきっ!」 バシッ ドタンドタンっ 「いったあ…」 「奏と泊まったクセに」 「うわぁ、マジ?つまり二股って事?」 「その顔で?まさかでしょう?こんなブス相手にするなんて」 「ひどい」 「みんな落ちついて、きっと何かの間違いだって」 「…ひどいのはどっちよ…」 ガタン  「あのさあ、私が何したっていうのよ! 飲み会に別れたばかりの元彼が今カノ連れて来て来たからヤケ酒してゲロ吐いてたののどこが悪いのよ!」 「汚っ、何居直ってんのよ!」 「そしたらあいつの友達だった二条君が介抱してくれただけじゃん!」 「あんたの元彼って誰よ…あっアイツでしょう?絆創膏みたいな顔の」 「どんな顔だよ!」 「絆創膏、私もなんかどの人かわかる…」 「なんでだよ」 「確かに似ている…いや、むしろ絆創膏そのものだけど」 「いたねぇ、友達の中に一人だけ場違いな絆創膏顔が」 「やだあんたあんなヤツに振られたの?」 「しかも今カノって確か…いやだって…」 ひそひそひそひそ …(小さい声で)きゃー 「何?何なの?気になるじゃん!」 その時救いの声がした。 「その人泊まったの、奏くんの家らしいですよ」 「あんた誰よ…ああ、あんたか」 「誰アレ?」 「(小さい声)ほらっ奏のストーカーの…」 「確かなんだろうね」 「まあね、彼は実家通いだし年頃の妹もいるから…そういう『一緒に寝る』はないね」 「…そうだよね、こんな女…しかも絆創膏の元カノなんかに手は出ないよね」 「もう限界…ムカつく」 ダッ ガンッ 「痛い!ちょっと何すんのよ!」 ダダダダッ 「あっ!逃げた!」 「待ちなさいよ…つぅ…やだ血が出てる」 「絆創膏あるよ…あっ絆創膏…」 「……」 「…追っかける?」 「…まあいいんじゃない、奏と何もなかったんなら」 ダダダダダッ ガラッ 「…なんでこんなとこにいんのよ!」 「お前だって授業あるだろ」 「私はサークルの部屋ならまだ誰もいないと思って来たの、二条君、今の時間は確か同じ授業取ってたよね、教室に行かなかった訳?」 「………」 「あんたまさか…」 「まあ怒るのもわかるけどさ」 「逃げたの?あの修羅場を見て?なんで助けてくれなかったの?」 「巻きこまれたら困る」 「ちょっと!巻きこまれたの私でしょう!」 「女って集まると怖いじゃん」 「信じられない、あんたイケメンなのに卑怯なの?あの女達だって綺麗なくせに よってたかって私一人をいじめて!なんなのあの娘達!あそこまでするなんてどんな関係よ!」 「まあ…なんだ、親しい友達?」 「親しい友達って、あのクレオパトラみたいにジャラジャラした飾りつけた顔濃いめの美女とか?」 「ああ、誰かわかる」 「あの大和撫子風性悪女とか、ボーイッシュ系だけどスタイル抜群の娘とか?」 「うん表現上手いね」 「小花柄のスカートの優しさは見た目だけの女とか?ナチュラル系の地味な女子とか?」 「うん、まあ、ああナチュラル系地味な子は違う、アイツは俺のストーカー」 「公認のストーカーまでいるの?見境なくない?どんなタイプの女性もアリな訳?」 「いや皆に手をつけてる訳じゃないよ、つけてる子もいるけど」 意味不明だ。 「それに俺には大抵やさしいんだよね、彼女達」 「そうだろうよ。 皆さんあんたに嫌われたくないもんね…ちょっとニヤニヤしないでよ!」 「まあ、悪かったって」 「まるで公開処刑だよ、相手が一人ならなんとか話合って穏便に対処出来たのに複数人から責められるなんて無理!」 「でも俺とは一人だけと付き合うとか無理だわ」 「えっどういう事?何が無理って?」 「特定の恋人って重くね?」 「重い…」 「俺らまだまだ若いじゃん、まだ結婚の必要もないのに一人にしばられるの嫌だわ、一人の女に責任感じるのとかヤバい」 「クズすぎる…じゃあ付き合うのとかやめて、楽しくみんなでワイワイしてたらいいじゃん!」 「そうはさせてもらえないの…わかるだろう」 ガタン…ギシッ… 「…罪滅ぼしに良い奴紹介してやるよ」 「………」 「バイト先に彼女欲しいって言ってた人がいるんだよ」 「どんな人?」 「…もう機嫌治したの?そいつはね、性格は良いやつだよ」 「見た目は?」 見た目は…なんていうか…包帯みたいな奴で」 「……」 「なんつうか嫌な事があっても、くるりと巻いて癒やしてくれそうなヤツ」 「……絆創膏に包帯…」 「何、絆創膏って?良いやつだよ、マジで」 「うっうん、考えてみるわ」 「じゃあ今から会いに行くか」 「へっ?今から?授業は?」 「もう今日は無理だろ、俺も面倒だし、店行こうぜ」 「店?」 「バイト先、その人オーナーさんの息子だから…ほら駅前のダニエルっていう」 「あっあの高級なケーキ屋さんの…(ごくん)…行く」 「はい決まり、だからさっきの事は許してね」 そういうイケメンの笑顔にほだされた後、ケーキに釣られて彼氏候補を見に行ってどうなったかは…ご想像にお任せします。 おしまい 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お読み頂いてありがとうございます。 会話がメインなこの話。 そのしばりを途中まで忘れていてほぼ出来上がっていたのをほぼ全部消して、泣く泣く書き直しました。 仕方ないのですが会話のみでない方が完成度は高かったです(涙)。 最近この作品とは別の短編を書きました。 タイトルは『鈍感娘に果敢に立ち向う子犬』です。 上の話に出てくる二人とは全く性格が違う男女が出てきます。恋に鈍感な女の子と、はっきり好きと言う勇気がなくて、でもめっちゃ頑張って押してる男の子の話です。 宜しくお願いします。
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