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都会の夜空
「、、寒っ、」
コンビニから出ると、冷たい風が唯一露出している顔に強く吹き付けた。不審者にならずに顔も覆える何かいい手は無いのだろうか。
冷え込んだ空気は澄んでいて、空に星がはっきりと見える。車通りの少ない住宅街で、めずらしくリアルな天体観測を楽しもうと歩くスピードを落とした。
パソコンの映像で見飽きるくらい見たあの夜空より、明らかに見える星は少ない。
東京の空は夜でも青に近い色をしていて、背の高いマンションや木々が影絵のように空にはりついていた。
住宅街を抜けて幅の広い公道に出た。建物ばかりで狭くなっていた空が少し開けた。
ぼんやりと赤信号を眺めていると、信号の真上の空で星が強く光った。
ほんの一瞬のできごとだった。
でもその一瞬が、スローモーションのようにはっきりとゆっくりと目にうつっていた。
星が弾けるように強く光り、線香花火の火玉が重みに耐えきれず落ちていくように下に向かって流れ落ちた。
飛行機雲のような光の軌道が伸び、火玉は燃え尽きるときにもう一度強い光で弾けて消えた。
一瞬だった。
流れ星のようだけれど、もっとずっと激しい光の不思議な自然現象に見とれてしまって、信号が青に変わったことに気づかなかった。
「火球、だ。」
自分からぽつりとこぼれた言葉に我に帰り、信号がもう一度赤に変わってしまったことに気がついた。
私はその不思議な自然現象の名前を知っていた。
知らないはずがなかった。
2010年12月1日 毎日流していたあの映像の夜空にも同じように火球が見えているから
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