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翌日、優馬のことは誰も覚えていなかった。皆あれほどチヤホヤしていたのに。最初に優馬を教室に連れてきた担任の先生さえもすっかりと忘れていた。出席を取るときも当然のように彼の名前は飛ばされた。机も椅子もいつの間にか片付けられていた。全てが夢だったのかとも思ったけど、しっかりと日付は進んでいるし、優馬以外のことは学校で起こったことも世間で起きたことも、皆と記憶を共有している。
彼は結局何だったのだろうか、と僕は考える。あの真っ白な光。そして僕の手に一つだけ残った、決して汚れることも色あせることもない一枚の羽根。この羽だけは、僕以外の人間にも見えるようだ。だけど、僕はすぐに誰にも見せないことに決めた。いつか会う日のために、この羽根を持っておこう。優馬の記憶を繋ぎとめておくために、持ち続けておこう。いつか僕自身がこの世界からも去る日がくるだろう。その時僕は、優馬を探しに行こう。その時は絶対にあの手を離さないでおこう。
終わり
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