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夕焼けの天使
時々、何でもない瞬間におそろしく心を揺さぶられることがある。針ほども細い三日月にいっとう明るく輝く金星が並んで瞬いているとき。目を覚ますと、窓の外に目も眩むほどの銀景色が広がっているとき。海風を受けながら、穏やかに凪いでいる浜辺に座っているとき。雲の切れ目から天使の通り道のような光のベールが差し込んでいるとき。そして、東の空が藍色のカーテンにきらめく星のボタンを留め、同時に西の空では鮮やかな朱色とラベンダー色のグラデーションが広がり、一日の最後の火を燃え上がらせているとき。そんな時、急にどこか遠くへ行ってしまいそうな気分になってしまう。ぼんやりと頭を空っぽにして、そういう景色を何分も何十分もずっと見続けている。ここ以外の違う世界が目の前に広がる景色の向こう側から顔を覗かせている気がする。
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