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第5章、旧物部村
物部郡は現在、高知県香美市の普通の町である
昭和55年に民間信仰である「いざなぎ流御祈祷の舞神楽」が
国重要無形民俗文化財に指定された市の重要な観光地である。
只、霊的にはやはり普通の人には行けない場所でもあると
私の心が目的地に近づくようになればなるほど心がざわつく
(選ばれた人しか通さない、相手を選ぶ道のようね)
土地の人には失礼な表現だがそれを異界というのであろうか
私も茉莉ちゃんと一緒でなければ
どの道から、あのお婆さんが待っている場所に行けばよいのか分からず
迷子になっていたことであろう
どの道を通ってきたのであろうか
普通は物部郡に行くには観光地とされている為に
バスに乗って行く筈なのだが
なぜか茉莉ちゃんは私を連れて敢て峻厳な獣道を徒歩で進んでいった
(もう疲れた、なんでこんな道の悪い雑草だらけの道を歩かなきゃいけないのよ)
そんな私の心を読んだ如く茉莉ちゃんは振り向いて私に言った
「もうすぐ着きますよ、私の故郷の旧物部村です。今の観光地とされた香美市の物部郡ではありません。優希さんがお考えになったように
ここだけは異界となっている村なのです。」
その話しを聞きながら
私は今からとんでもないところに連れていかれる恐怖感を感じた。
そして目的地の村に着いた。
そして村に入った途中で私はとんでもないものを見つけてしまった
藁人形を見つけたのである
金床の上にその藁人形は置かれて
両目の部分と心臓がある部分に釘が打ち込まれていたのである
「さあ、ここが私の故郷、旧物部村です」
茉莉ちゃんは私に紹介した
そこに現れたのはタイムスリップしたかのような昭和初期の風情のような村
私は藁葺き屋根の古民家に通された
そこの庵に座って待っていたのは私の夢に出てきた「お婆さん」
「よく遠いところからお越し頂きありがとうございます。
長い間、待っていました。大きくなり綺麗になりましたね
我が可愛い孫よ」
私は混乱した、そして猛烈に怒りが沸いてきた
「孫とはどういう意味でしょうか、私はお婆さんを存じ上げておりませんわ」
私の怒りを感じることなくお婆さんは自分の話しを滔々と繰り返した
「綾子が亡くなったのは知っていました、綾子からは何も聞いていないのですね」私は頭の中が真っ白になっていった
「なぜ、お母さんの事を知っているのですか!」
お婆さんは答えた。「綾子は私の娘だからだよ」
「25年前の嵐の夜、綾子は6歳になる優希を連れてこの村から出ていったんだよ」
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