第7章、過去との符号

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第7章、過去との符号

優希は一日、布団の中で臥せっていた 体から力が抜けて起き上がれなかった 茉莉は食事から清拭まで優希の為に 甲斐甲斐しく働き尽くしてくれた 優希は体は動けなかったが 頭の中は忙しく動いていた 自分の記憶の中にあった「光一君」との符号 嵐の夜に母親に連れられて船に乗り その時に見た海夜の光景 村を出る前に食べた時の母の落涙の記憶 その時に言われた哀しい言葉 「ごめんね、あなたはいい子なのに、ごめんね」 そして自分の中に流れている母と同じ血筋と能力 私の脚は自分の脚ではなく四つ足憑きからの借り物 つまり私はもう既に憑き物と同化している(化け物) 東京に出てきて何のツテもなく 一生独身で必死で働き一人娘の優希を育ててくれた母 昼は会社の経理の正社員で働き 夜は飲食店でバイトし 休日も友達の店で夜のバイトをしてた母 優希にはお金に困らせないだけの金額を女手一つで稼いでいた 優希には決して片親でも胸を張って生きていくようにと 自分の生き方で教えてくれた母 必死で生きてきた母 優希には口癖のように何度も言っていた言葉 「普通で平凡に生きて、毎日平和なのが一番幸せな事なのよ お母さんには優希が居るし、働ける健康な体を神様から御借りしてるのよ」 優希はその母の言葉を思い出し 涙が止まらなくなってきた、嗚咽が止まらなくなった (そうよ、誰が特殊な能力を望んで生まれてきたわけじゃないわよ) (お母さんも私も普通の人生を生きたかったのよ) 母は優希が高校生の時に悪性の肺癌に罹り 発見した時は末期だった 生き急いだ母、死を覚悟した時ベット上で優希に言った言葉 「お母さんは優希が生まれてきてくれて幸せだった 本当にありがとう」 生き急がざる得ない人生を優希が物心つく前に経験せざる得なかった 「いざなぎ流陰陽祈祷師の呪われた血」 今、優希は自分の記憶に無理やり蓋をして消し去った事が 全て思い出せるようになった 隣に座っていた茉莉 泣きながら土下座しながら優希に話した 「優希さん、私は憑坐ましです。 いざなぎ流陰陽祈祷師の能力は 優希さんと憑坐の私の二人がひとつにならなければ強大な敵を調伏できません。優希さんは村から離れて結婚されて普通の幸せを得ている女性です。 なので私は優希さんに無理強いはできません。優希さんの自由です ですが私はずっとこの村で憑坐として生きざる得ませんでした 普通の女性の幸せとは程遠い世界で生きてきました。」 「改めて申し訳ありません。私が毎日あの散歩道のベンチで優希さんを見ていたのはこの計画の為です。お婆さんのこの世の自然な地球の意志、宇宙の意志が邪悪な者によって壊されるのを食い止めたい願いと私の勝手な行動で故です。 ですから、この調伏計画がお気に召さないのなら、いえ当然ですよね、 ・・・・ ほとんど、私が優希さんを騙して埼玉の旦那様から一週間でも優希さんを連れまわしたですから、」 優希は茉莉の言葉を目を瞑って聞いていた もう優希の中では覚悟が出来てる
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