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2.和氏の璧【韓非】
先生がまたぐだぐだ言ってる。
先生は韓の公子だし本当はきちっとした人なんだが、たまーに全然だめな人間になる。今日もそうだ。父君である桓恵王に法家の思想について進言したがてんでだめだったそうだ。
今は部屋でグチグチ言いながら飲んでいる。
先生はなぁ。言ってることはすげぇんだよ、多分。若いころは荀子っていう偉い先生のところに弟子入りしててな、そこでいい論文をたくさん書いたって聞いたんだ。ちょっと見せてもらったけど、先生の書く御本はまるで渓流が流れてるみたいに頭の中にすらすら入ってくるんだ。
でもなぁ。吃音っていうのかな。口を開くとうまく喋れなくて、兄弟の公子にも馬鹿にされてた。今は弁士ってのが幅をきかせてるからなぁ。先生みたいにうまく喋れないのはだめかもしれない。
でも俺はこんな変な先生が好きだからさ、今日も愚痴につきあってるんだ。
「なあお前、こんな話知ってるか。」
ああまた先生の愚痴が始まった。
「『和氏の璧』って知ってるだろ。」
「ああ、先の趙王が秦の昭襄王に15の都市引き換えによこせって強請られたすげぇ宝玉っすね」
「そうだ、実はその璧はだな」
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