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◇◇◇
「という話をわしは以前聞いたことがあってな」
「はぁ」
「まあつまりはさ。結局は15もの都市と引き換えになるような立派な璧でも認められるのは大変なんだよ、俺の法術の話なんて両足切られたって認められねぇさ、おい聞いてるかお前」
ちゃんと聞いてますよ。だから俺は先生の猪口に徳利を傾ける。先生はうむうむと髭をなでつける。なんかもう目がすわってきてるな。
「でな、国を治めるには法が一番なんだよ、今の縁故で親類貴族が好き勝手してるのを取り締まってさ、法で一元化してチャーっと国を纏めるのが一番なんだよ。でもなぁ。下手に進言しちゃうとさ、和氏みたいに足ちょん切られちゃうのよ。貴族の利権なくなっちゃうからな。桓恵王は父だから進言できるんだけどさ、結局ダメなんだねぇ」
「駄目ですか」
「駄目だねぇ。やっぱ利権があるからなぁ。そもそも法家ってのはどこでもうまくいかないんだよ。法家の呉起は進言して却下されて八裂き、商鞅は進言して入れられて車裂き。こんなだからだから中華統一をする覇王は現れないんだよ。もっとシステマティックにやらないとさ」
「大変なんですね」
「まぁ、璧争うよりどっかで俺の法術を認めてくんないかな」
そういって先生は酔いつぶれた。あーあ、御本はいいの書くんだけどな。
でもまぁ法家ってのはそんな定めなのかね。
先生の書いた韓非子っていう本は秦王政の目に止まって是非にと請われた。先生は喜び勇んで秦に言ったけど、結局投獄されて服毒させられたらしい。
でも秦王政は先生の思想の通りシステマティックに富国強兵して中華を統一して始皇帝になったから、本望なのかな?
ー後書き
原典:『韓非子』(和氏篇十三)
韓非ってのは自分のイメージでコジレ中年です。何故だろ?
韓非は李斯に呼ばれて秦にいくんだけど、李斯に陥れられて投獄されたっていう説が有力。そうだとすると李斯はなんで韓非を呼んだのかって正直疑問。
秦王政は韓非子を読んでいたく気に入ったという。もともと秦は法家の国だし秦王政自身、呂不韋とか色々人的政治に苦しんだからな。
だから李斯あんまり関係なく呼んだんじゃないかなと思わなくもない。呼んだというか韓を攻めて使者に韓非を指名したんだと思うけど。
そして自分の脳内の秦王政と韓非はうまがあいそうにない。
なお、そんな韓非先生の施策をいれた秦は富国強兵に成功して中華を統一します。そんな法家の思想と義の戦いを中編で書いてるので↓、よんでくれると嬉しいな!
【荊軻伝 傍らに人なきが如く】
https://estar.jp/novels/25752048
次話は最初のページにあった昭襄王が趙から璧を奪おうとした話。
今までにない変態的な藺相如像にしちゃったけど、怒らないでね。このキャラ設定は、あくまでこの藺相如短編3つのみで、中編にあわせて藺相如と廉頗が出てくる時はちゃんとキャラをなおす予定。
【予告】2/11-12 完璧帰趙【藺相如・昭襄王】 扉絵は酷い使い回しである。
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