第三章

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 今日付けで、心愛の家族が捜索願を出して、警察は事件と事故の両面で調査しているとのことだった。僕も何が起きているのか、どうしてこうなってしまったのか分からず、宙ぶらりんのままなのに、彼女失踪の犯人として疑われていた。僕としては、その容疑を否認するほかならなかったけど、その態度が気に食わなかったのか白坂さんの逆鱗に触れてしまい、今に至る。  僕は本当に疲れ果てていた。 「待てよ、そうやって責めても何も言ってくれるわけないだろ」  建設的な意見を出したのははらっちだった。  その言葉に、白坂さんは納得していなかったが、とりあえず胸倉から手が離れていった。僕は力なく床にへたり込んだ。 「俺たちはさ、別にお前がすべて悪いとは思っていない。だけど、あの日、篠田と何があった。それを知りたいんだ」  はらっちは真剣なまなざしでこちらを見ていた。そんなものを向けられたところで、さっきから言っていることを覆したりしない。 「何度も言っているけど……確かに、篠田さんと海には行った。だけど、体調も良くなさそうだったから、すぐに帰ることにしたんだ。それで、僕が帰りの電車で眠っている間に、彼女はいなくなっていた。それだけだよ」 「そんなはずないでしょ!」  空気を切り裂くような甲高い叫び声が僕の鼓膜を揺らす。白坂さんは肩で息をしていた。 「まあ、落ち着けよ」  幹人が肩で息をしている白坂さんの肩に手をおくが、それを払いのけてこちらに向かってこようとする。周りにいた女子たちも加勢して、彼女をどうにか落ち着かせる。  はらっちが口を開こうとしたときに、後方から声がした。 「事実はそうだとしても、いなくなる前触れとか、そういうのがあってもおかしくないと思うんだけど、きみは心当たりないの?」  圭太は感情を消してフラットにそう言った。 「少なくとも、僕はそういう変化はわからなかった。海に着いて行ったのも、話があるからと言われて、ついて行っただけなんだ」 「それで、心愛はきみになんか言ったのかい?」 「いや……とくには」  全方向から鋭い視線が飛んでくる。色々なものを隠してきた僕でも、これはさすがに隠し切れないかもしれない。でも、今ここで彼女がアンドロイドだったという話をするもの何か違う気がした。それこそ、おかしい人認定を加速させてしまう。  はらっちが息を吸った。 「ちょっと話ずれちゃうかもしれないけどさ。俺からすると学校さぼってまでどこかへ行くって相当仲良く感じるけど、そもそもロイドと篠田はどういう関係なんだ?」  この状況を生み出してしまっているのは、何もこの事件の容疑をかけられているだけではない。ずっと積み重ねてきた疑念が今回の騒動で爆発しているところはあった。つまり、僕と心愛の関係性はどういうものか、その真相を知りたいクラスメイトは大勢いるということだ。  僕の口元にクラス中の視線が集まっていた。  僕はしばらく逡巡してから、諦めたように息を吐いて口を開いた。 「篠田さんは病気だったんだ」 「それは知っているよ」  はらっちは怪訝な表情を浮かべていた。 「いや、盲腸とか、肺炎とかそういういつか治るような病気じゃなかった」 「ちょっと待ってくれよ、ロイド。そりゃどういうことだ」  幹人の悲痛な声には耳を塞ぎたかった。 「篠田さんは余命宣告されていた。もちろん、篠田さんが僕にそのことを伝えたんじゃない。たまたま、篠田さんの病室にあった日記を見てしまったんだ。それで……」 「なんで今までそれを黙っていたのよ!」  そう言って、白坂さんは何もしてやれなかったと泣き崩れていった。
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