第三章

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 僕は神様なんて信じていないけれど、もし本当にいるのだとしたら、どれほど残酷な心の持ち主なのだろうか。次々となだれ込む試練におかしくなってしまいそうだ。    クラスのグループラインは大いに賑わいを見せていた。僕はそっとそれから目を逸らし、篠田心愛のところをタップする。  そこには、既読のつかないメッセージがずらりと羅列している。僕はちゃんと守っているのに、言い出しっぺのきみの方が忘れているじゃないか。それは彼女との交換日記だった。もう一人で七日分も書いてしまったよ。これでは交換じゃなくて、一方日記になってしまう。いや、それでもいいのかもしれない。とにかく、返事なんかいらないから、一方日記でもいいから、せめて既読をつけて欲しい。その一心だった。    僕は今日もメッセージを書き込んでいく。 『今日はね、一つ残酷な報告があるんだ。きみの捜索願が撤回されてね、もう探さなくても良いということになったんだ。きみからしたら、この結果は喜ばしいことなのかもしれないし、本望なのかもしれない。でも、僕らはけしてあきらめない。きみがうざいと感じても、しつこいと感じても僕らはきみを探す。今もクラスのグループラインはお祭り騒ぎだよ。なんでだ! とか、おかしい! とか。きみは本当に愛されているんだね。羨ましくらいだよ。僕はといえば、きみがいなくなってから……』  僕の手が止まる。震えていた。夜の静寂がこうも僕の心を空虚にしていく。僕はどちらかといえば、夜は好きだったはずなのに。  書き込んでいった文字をすべて消して僕は新たな文字を紡ぐ。 『僕はいつまでもきみを待っているよ。』  
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