53人が本棚に入れています
本棚に追加
初恋
いつもの駅にいた。
3年間通った駅だ。
でも今日は反対側のホームに立っている。
彼女を乗せた電車がやってきて止まる。
開いたドアから乗り込んだ。
「おはよ」
彼女が笑顔で言う。
「良かった。寝坊しなかったんだね」
照れ隠しで、そんなことを言ってしまったのに、怒った風でもなく
「遊びに行く時は、目覚ましより早く起きれるんだよ」
不思議だーと笑う。
「授業中、良く寝てたもんねぇ」
「ホントホント、よく卒業出来たもんだ」
あははーと、豪快にまた笑う。
そう、私たちは先月末、高校を卒業した。
制服とジャージ以外の彼女を見たのは初めてだ。
初めて2人で出掛けるのだから当たり前だ。
じっと見てたら
「変?」と聞く。
Tシャツにジーンズ、ダウンコート、スニーカー、彼女らしい。
「変じゃないよ、動きやすさ重視だね、綾らしい」
私も同じようなものだけど。
目的地に着いたら、綾がチケットを買ってきてくれた。
自分の分の代金を払い、「広いんだねぇ」と感想を漏らすと
ちょっと首を傾げて「もしかして、初めて?」と驚く。
「遊園地は苦手で」
「じゃ、なんでココにしたの?」
「デートといえば遊園地かなって」
ぷはっ
「チャレンジャーだなぁ」
また派手に笑ってる。
「よし、行こう!案外楽しくて今日から好きになるかもよ?」
そういう、綾のポジティブなところが好きだ。
綾と一緒なら高いところも怖くないかもな。
最初のコメントを投稿しよう!