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「わっ、ごめん。本気で寝てた」
「ん、5分くらいだよ」
「起こしてくれれば良かったのに」
「寝顔が面白かったから」
「げっ」
今日一日で、こんなに色々な綾が見られるなんて思わなかったな。
まだまだ知らないこともあるんだろうな。
「さ、次はどうする?」
「食べた後だから、バイキングは無理だね」
「うん、確実に吐く」
「じゃ、あれだ」
綾が指をさした方向を見る。
「あ、自転車」
「行こ!」
園内のサイクリングロードを自由に走れるらしい。
「いろんな種類があるんだねぇ」
「せっかくだから・・・」と
選んだのは、前後に繋がってる自転車だ。
二人で一緒に乗れる。
「今度は綾が前だよ」
「わかったよ。でも、ちゃんと漕いでね」
「綾、体力には自信あるでしょ?」
「あるけど、こういうのは協力しなきゃ」
「ん、わかった。下りは漕ぐよ」
「おい!」
「あはは。」
「ひゃっほー」
「きもちいいねぇ」
下りは気持ちいいし。
「負けてたまるか」
「え、何に勝つの?」
上りは上りで、綾がむきになって漕ぐから面白い。
この背中をずっと見ていたい。
私の高校生活は、何をするにも一生懸命だったこの背中をずっと追いかけてた気がする。
「結構長かったねぇ、楽しかったからいいけど」
なにげに広い園内だ。
「じゃぁ、そろそろ最後のメインへ行きますか」
「ん?アレ?」
「最後はもちろん観覧車でしょ?」
「まじか。。あっ、着信あったみたい。ちょっと電話してくる。ついでにトイレも行ってくるね」
「うん、じゃ、ここで待ってるね」
綾は、木陰のベンチにドカッと座った。
やっぱり着信は家からだった。
面倒くさいけど、連絡入れないともっと面倒なことになりそうなので電話をした。
あれこれ言われて少し長電話になった。
どうしようもなく現実に引き戻された。
現実?
今の、綾との時間は現実じゃないの?夢なの?
トイレも済ませて、綾の待つ場所へ行こうとした時、綾の周りの女の子たちに気付いた。
気付いて、動けなくなった。
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