初恋

9/16
前へ
/16ページ
次へ
 え?  その答えは、想像してなかったな。  yesかnoだと思ってたから。 「知ってた?」 「うん」 「そっか、それが答えなんだね」 「狡くてごめん。気付かないふりをしてた。noって言ったら今までの関係が壊れてしまいそうで、かといってyesって答えても、どうしていいかわからなくて。わからないんだ、好きなのかどうか」 「うん、わかった。私も同じようなものだから。今まで告白する勇気もなかったくせに、会えなくなると思ったら無性に寂しくなって。これできっぱり諦められるよ」  今日は無理にでも笑ってサヨナラしたい。  楽しい一日だったから。 「しょう……泣いていいよ。私の胸、貸してあげる」 「なに言っ……」  問答無用で抱きしめられた。  綾の鼓動を感じながら、少しだけ泣いた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加