レジオネール戦記・ドフィーネの女王(1)

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 マリー司令が軽口を叩く。そう言えるような雰囲気を作るのが上官の役目だと、イーリヤ将軍に示されてからはずっとこんな感じを貫いていた。それぞれが思い思いに壁に背を預けたり、椅子に座ったりしてリラックスしている。 「ドフィーネという国を奪うわけか。まあそういうのも初めてじゃない、丁度良い目標だな」  机に拡げられている地図を覗き込んでそういうのはブッフバルト副司令官副官、マリー司令の親友だ。北方バーデン王国出身で冷静沈着、真面目一徹が売り。そんな彼でも戦場では目を血走らせて前に出てしまうのが玉に瑕。 「ローヌ河並びにイーゼル河が鍵ですか。河船の用意に力を入れる必要がある」  この中では年長者に属するバスターは、潜水部隊の指揮官。ステア王国出身で元はと言えばかの国の軍人だった。体力の低下に伴い軍を弾かれ惨めな生活を送り、家族にも煙たがられていた時に、イーリヤ将軍と出会った。使いどころが非常に狭い中年の退役者を「貴官が必要だ、力を貸して貰えるだろうか?」と求められ、感動して従っている。 「水夫を雇うことになるな、ストーンならどうする?」  椅子に座って足を机の上に投げ出しているマリー司令が、若手の筆頭にサラッと質問する。イーリヤ将軍に、マリーの次の世代と言われている青年で、同格の指揮官の中では能力がずぬけていた。 「ドフィーネ王国内から雇用する、それも特定地域から」
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