無整路

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無整路

 その日暮らしの放浪者になっちまった訳なら俺が聞きたい。  仲間とツーリングを楽しんだ後、パーキングにバイクを預け、洒落たラウンジで酒を呷った。  ラウンジで口説いた女とホテルで遊んで眠った翌日、窓の外は干からびた世界だった。隣で寝ていた女も、ホテルの従業員も、いなくなっていた。  俺は怖くなって街中を探し回った。建物という建物は風化し、傾き崩れていた。声を上げて人を呼んでも、風が寂しく囁くだけだ。人がたくさんいるはずの歓楽街に、人っ子一人いなかった。  俺は街を彷徨い歩いた。悪い夢なら覚めてくれ。何度も思ったが、目に映る物は一向に変わらなかった。  茫然と街を歩いていると、砂に埋まっている自分のバイクを見つけた。バイクを起動してみたが、かかりが悪くなっていた。  まずバイクをどうにかしようとした。そんなことをしても一変した状況は変わらない。何でもいいからどうにかしなきゃと、気持ちが先走っていた。そうしなきゃ落ち着いていられなかった。  俺は照りつける寂れた街中を探し回り、バイクが置いてありそうな建物の中を漁った。飲み物や食べ物をパクりもした。期待とは裏腹に、まともに飲み食いできそうな物はほとんど残ってなかった。  汗水垂らしながら必要な工具を見つけ、バイクを修理できた。バイク整備の職を手につけていたことが幸いしたようだ。
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