希望はここに

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 元の世界に戻りたい。一生思って生きていくだろう。きっとこの子も、逢いたい家族や友達がいたはずだ。  だがどんなに願っても、俺の前には砂まみれの世界しか見えない。何もかも砂に埋もれてしまう世界は、俺に絶望を見せているのかもしれない。  でも、ここに希望がある。俺以外に、この砂の世界に取り残された者がいるかもしれない。なぜこんな世界に俺がいるのか未だに分からないが、たとえ分からなかったとしても、俺が絶望に伏すことはなかっただろう。 『人生は楽しむもんだ。しっかり目を開いて、世界を見渡せ』  俺みたいなはぐれ者でも、じいさんはそう言って俺を可愛がってくれた。あのじいさんの言葉があったから、俺は今も生きていられる気がする。  俺は水を飲み、口を潤す。空いた缶詰に水を入れ、女の子に渡す。 「飲んどけ」  女の子は両手で受け取り、唇を切らないように慎重に飲む。  少し休憩を取った俺達は出発の準備を進める。リュックを背負い、女の子の前でしゃがむ。ポケットからクシャクシャのメモ用紙を取り出し、女の子に渡す。 「いいか。バイクのアルミニウム電池、保存食、水。この三つを一緒に探す。オッケー?」  女の子は首肯した。 「いい子だ」  俺は女の子の頭を撫で、店を出る。  外は依然陽射しが強い。ガラクタが転がる道の遠くでは陽炎が揺れている。砂を被る建物の間を通り、街の中を二人で進む。  世界がなぜこうなってしまったのか。  なぜ俺達だけがいるのか。分からないことだらけだ。それが分かったからといって、元の世界に戻れる保障もない。  ただ一つ、分かっていることがあるとすれば、人生はいつだって楽しみに溢れてるってことだ。それを見失わなければ、どんな世界だって生きられる。そう信じてる。
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