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少し重みのある扉を開けた雄二は、陽光が差し込む部屋の中央で一際白い輝きを放つ女性の後ろ姿を見て目を細めた。
「……朱里」
ドレスをふわりと揺らしながら、ゆっくりと振り返った朱里。華やかに色付いた目元、ほんのりピンクに染まった頬、純白のグローブに包まれた華奢な腕、一輪の花のようにふわっと広がったレース。想像を超えた朱里の美しさと華やかさに驚いてしまい、言葉が喉の奥底につかえて上手く出てこない。
「……どうかな? 似合ってるかな?」
不安そうな顔をした朱里の両肩に手を置いた雄二は、表情を和らげて言った。
「すごく綺麗だよ。正直……朱里のドレス姿を見て、本当に結婚するんだなってやっと実感が湧いてきたよ」
「ふふ、籍入れたのかなり前なのに、実感湧くの遅すぎでしょ。変なの」
クスクスと目を細めて笑う姿を見て、急に胸を締め付けられる思いが込み上げた雄二は朱里をそっと抱き締めた。その瞬間――誰もいない教室で朱里を抱き締めたあの日の情景や心情が雄二の心に浮かんだ。
「ちょっと、いきなりどうしたの?あれ、もしかしてもう泣いてるのー?」
図星を突かれた雄二は目頭に力を入れて、今にも零れ落ちそうな涙を堪えながらあの日の出来事を思い返していた。
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