少しの勇気で変わる未来があるとしたら

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 職員室へ戻り、抱えていた答案用紙をデスクに置く。次の授業でテストを返却しなければならないため、このまま休む間も無くデスク上に重ねられているテストの採点を始めなければならない。  デスクにある濃紺のマグカップをコーヒーメーカーに置いた雄二は、首を回しながら大きな背伸びをした。集中したい時のお供といえば、やはり温かいコーヒーに限る。  ほろ苦い香りと共にデスクに戻った雄二は、マジックで「2-1」と書いてある茶封筒から答案用紙を取り出して丁寧に揃えた。そして、答案用紙と解答が書かれている自作のプリントを見比べながら、赤のマジックをキュッと鳴らす。  職員室に日誌を届けに来る日直やテストの愚痴を言いに来る生徒の数が減った頃、上階から伝わってくるガチャガチャと机を並べながら掃除をしていた音や、玄関から聞こえていた声が鳴り止んだ。窓の外へ目を向けると、すっかり空が橙色に変化している事に気付いた。  ――朱里は、手紙を読んだだろうか。  丁度3クラス分の採点も終わって集中力が切れてきた為、2階のリフレッシュルームにある自動販売機でエナジードリンクを買う事にした。  両手を高く天井に向けながら廊下を歩き、腰をトントン叩きながら階段を上る。実年齢より若く見られる私もすっかりオヤジくさくなり、以前より身体も硬くなってしまったようだ。  放課後や休憩時には7つあるテーブルに生徒たちがひっきりなしに群がるリフレッシュルームだが、今日はしんと静まり返り、大きな窓から差し込む夕陽だけがこの場の雰囲気を暖かくしていた。  ふと、リフレッシュルームの向かい側にある朱里のクラスに目を向けた。引き戸にはめ込まれているガラスから教室内をそっと覗き込むと、橙に色付いている窓際の席で、黙々と何かを書いている朱里の姿があった。  
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