出逢い

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最近の運動不足に加えて、 今夜の飲み過ぎと食べ過ぎを少しは解消しようと、 俺は数駅先の駅へ向かっていた。 その道すがら、 歩道もないような小さな橋がある。 こんな真夜中では車も通らないような橋だ。 俺は、その橋の手摺の上に、 女が立っているのを見つけてしまった。 女の死んだような目をした横顔を、 橋に数メートルおきに並んでいる灯りが淡く照らしている。 若い女だ。 短いスカートが夜風にヒラヒラと揺れていた。 今から何をする気なのかー。 考える必要もないくらいに明らかだった。 橋の下は川になっていて、 昨日まで降り続いた大雨の影響で水かさが増していて、 流れも速い。 落ちてしまったら、無事では済まないだろう。 残念なことに、俺は、 それを見なかったことに出来るほど人間を捨ててはいなかったし、 無視できるほど心臓にも心にも毛は生えていない。 だから、若い女の脚が少しずつ前のめりに倒れていくときには、 俺はもうすぐ後ろまで走っていて、 彼女に手を伸ばしていた。 掴んだ手首は恐ろしいほどに細くて、 少し力を入れれば折れてしまいそうだった。 前のめりに倒れていこうとしていた身体を後ろに引っ張れば、 軽い体重は空に浮いた。 それでも、 それなりの重力を持って、 尻餅をついた俺の胸板に背中をぶつけて落ちて来た。 俺の股の間に座る格好で、 女は背を向けたまま呆然としていた。
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