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一話*流浪の天使
「ベリル・レジデント?」
男は、いぶかしげな顔で渡された写真を見やった。
「そうです」
女は答えて、すがるような眼差しを男に向ける。
「お願いです。この男を捕まえてください」
背中まで伸びた栗色の髪からは艶が失われ、すらりとした手足は力なくだらりと垂れ下がっている。綺麗に伸びた鼻筋に上品な色のルージュがひかれた唇は微かに震え、整った顔立ちには少しの疲労が見て取れた。
喉を詰まらせて訴えかける美女に潤んだ青い瞳で見つめられ、男は心臓を高鳴らせた。その感情を悟られないように再度、写真を見下ろす。
遠方から撮られたものだろうか、輪郭が少しぼやけている。それでも解るのは、その男がかなりの美形だということだ。
「この男が何をしたのか、詳しく教えていただけますか」
女は問いかけに眉根を寄せたあと、涙を拭うように目尻にハンカチをあてがう。
「その男は、私の夫を殺しました。愛していたのに……。なんて酷い」
そう言うと女は、感情を抑えきれずに声を上げてテーブルにつっぷした。
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