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「この男に面識は」
「ありません。私も、夫も、まったく知らない男です」
夫がただ優秀だったというだけでこんな仕打ちは、あんまりですと再び涙がこぼれた。
「ただ黙って逮捕されるのを待つだけなんて、そんなこと許せない。けれど、この男はとても強くて誰も太刀打ち出来ないと聞き、私は絶望しました。そんなときに、貴方を知ったんです」
主人の友人から、あなたならきっと受けてくれるだろうと──
「お願いします。流浪の天使と呼ばれる名うてのハンターのあなたなら、この男を必ず捕まえてくれると信じています」
「誰が付けたんだか。ガラじゃない」
肩をすくめて苦笑いを返すと女は首を横に振った。
「いいえ」
あなたはその名前に相応しい人です。
お世辞ではなく、素直な感情なのだろう。そう思うと余計に照れくさい。悲しみに暮れる相手に失礼かとも思うが未亡人というのは、どうしてこうも艶っぽく見えるのだろうか。
「お願い。クリア・セシエル」
立ち上がり、ふらつきながら近づいてその手を強く握った。
見下ろす美女の潤んだ瞳に目眩を覚え、そのまま抱きしめかけるも頭を振って気を取り直す。
「じゃあ、アンジー。この男について、もっと情報が欲しい」
言うと、女はUSBメモリをすいとセシエルに差し出した。
「ここに、この男について私が調べた全てを記しています」
必ず、私の前に連れてきて──
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