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プロローグ
僕は、山田華を愛していた。それだけは疑いようの無い真実として、理解して頂きたい。
たったそれだけの文字をケータイのメールにしたためて、彼女の恋人は夕焼け空へと飛ばされた。僕等が通う大学の最寄駅から一番近い踏み切りに、彼は自ら進んで飛び込んだのだ。あの時、異常に気付いた運転手が速度を緩めていたとしても、突然、踏み切りの柵を潜り抜けた彼を避けることは不可能だった。
苦しむ前に即死したのが唯一の救いだと、誰かが他人事のように言っていた。彼が死んだ時点で、救いなんて微塵も残っていなかった。
余りにも呆気ない終わり。しかし、それがすべての始まりだった。
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