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背を向けながらスプリングベッドが唯の重さで少し沈むのを感じながら
「ねぇ、唯」
そう声をかけた。
どうしよう、なんて言ったらいいのだろう。
しようよって言って伝わる?いや、でも…そもそもなんでしなくなったのだろう。
頭の中は彼のことで占領されていてそれもなんだか悔しい。
「起きてたの?」
「うん」
唯が私を背後からギュッと抱きしめてきた。
鼓動の音が徐々に大きくなる。彼に届いていないだろうか、心配になる。
私だけなのかな、ドキドキしてしまうのは。
時計の針の音が寝室に響いていた。唯は時計が好きではないのに、私の希望で寝室に木製の時計が立てかけてある。
「寝ないの?」
「…うん、眠くなくて」
「珍しい」
「あのさぁ、」
「何?」
腹部に回った腕が強く私の体を拘束する。
「唯のこと…教えてよ」
「俺のこと?」
「そう。だって唯は私のことは何でも知ってるくせに、私は唯のこと何もしらない」
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