逆らえない

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そこまで高くはない気温、湿度。 それなのに、こんなにもじっとりと汗ばんでいるのは、これから会わなければならない人に”会いたくない”からだった。 せっかくの仕事終わりなのに、携帯に届いたメッセージに一気に気分が下がった。 「美月、これから一杯どう?」 同僚の笠倉美奈(カサクラ ミナ)から背後から声をかけられる。 私は、両手を顔の前で合わせて 「ごめん、予定あるんだ…」 と申し訳なさそうにいった。 今日は金曜日、本来なら明日からの休みに心が躍るのに。 「そっかあ、残念~せっかく藤崎先輩とのこと聞けると思ったのに~」 「まだ何もないよ」 「まだって、もうあっちは美月のこと好きだよ。いいな~あんな優しくてイケメンな人滅多にいないよ。早く付き合っちゃいないよ」 「…うん」 「じゃあ、気を付けてね~」 「うん、美奈もね」 私は、美奈と別れて会社を後にした。
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