13491人が本棚に入れています
本棚に追加
/281ページ
そこまで高くはない気温、湿度。
それなのに、こんなにもじっとりと汗ばんでいるのは、これから会わなければならない人に”会いたくない”からだった。
せっかくの仕事終わりなのに、携帯に届いたメッセージに一気に気分が下がった。
「美月、これから一杯どう?」
同僚の笠倉美奈から背後から声をかけられる。
私は、両手を顔の前で合わせて
「ごめん、予定あるんだ…」
と申し訳なさそうにいった。
今日は金曜日、本来なら明日からの休みに心が躍るのに。
「そっかあ、残念~せっかく藤崎先輩とのこと聞けると思ったのに~」
「まだ何もないよ」
「まだって、もうあっちは美月のこと好きだよ。いいな~あんな優しくてイケメンな人滅多にいないよ。早く付き合っちゃいないよ」
「…うん」
「じゃあ、気を付けてね~」
「うん、美奈もね」
私は、美奈と別れて会社を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!