第四章 海

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          *  翌日、ウミの靴が海岸で見つかった。    初めて水族館に行った日の午後に立ち寄った海岸だった。  綺麗に揃えられた靴と、手紙だけが砂浜に残されていた。  手紙にはたった一文―― 『幸せを見つけにいきます』  そう書かれているだけだった。筆跡は間違いなくウミのものだった。  足跡の状態からおそらく誕生日の午前中にはここにいたのだろうということだった。  足跡は海に向かって一直線に伸びていた。  僕の頭の中に恐ろしい考えがよぎった。  ウミは自殺した?  考えたくもないことだった。どうしてウミは自殺しなければならないのか。  僕と一緒にいるときは幸せそうに絵を描いていた。  実際に「幸せだね」と口にしてもいた。  なのにどうして……。  手紙には、幸せを見つけにいきますと書かれていた。  今までは幸せじゃなかったということなのだろうか。  僕と過ごした時間は全部退屈で、「幸せだね」という言葉は嘘だったのだろうか。  僕は怒りとも悲しみともつかない感情に苛まれた。  捌け口が見つからず、胸の中で膨らみ続けた感情が破裂してしまいそうだった。  ウミはいったい何を考えていたのだろうか。  自殺とは断定できないため、連日警察による捜索が行われた。  コンビニや駐車場の防犯カメラ映像から、海岸付近を歩くウミの姿が捉えられていた。  しかし、それ以降に彼女の姿を捉えているものはなかった。  もちろん、僕やウミの両親も必死に探し回った。  他県への捜索願いも出され、SNSを使って目撃情報を募ったりもした。  だけど、ウミが見つかることはなかった。           *
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