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オンライン神社
おじさんは、チャットで俺に話しかけてきた。オンライン神社には参拝客のヘルプ対応のために設置したチャットがあるのだ。
「ふむふむ、オンライン神社か。なかなかの居心地だ。よし、わしがここに来たやつの願いを叶えてやろう」
俺もチャットで応対する。
「あんた何者だ? サイト乗っ取りか?」
「違う。わしはインターネットの世界に宿った神様じゃ。神様はどこにでもいるのじゃぞ」
「なんだって?」
俺は眉をひそめる。当然、冗談だと思った。しかし……「オンライン神社」なんてものを作っておきながら、神様がここにいるわけない、と真っ向否定するのもどうかと思った。俺はいわばここの神主だ。神主が神様の存在を否定するのは変だろう。無下にせず対応することにした。
「あなたは、本当に神様なのですか?」
「ああ」
「しかし、俺にはサイト乗っ取りや、いたずらと区別がつけられません。何か証拠を見せていただけませんか」
「うむ。ではまずお前の願いを叶えてやろう」
願い、か……
「俺、このところ体調悪いんです。治してくれませんか」
コロナ禍だから、大学に通学できず鬱々としていた。慣れないオンライン授業続きで、眠れなかったり、食欲がなかったりで、常に体がだるいのだ。外にバイトに行くのがだるいから、こんなサイトを作って小遣い稼ぎを目論んだ。サイト制作の作業も休み休みやったから、想定より時間がかかっている。
「よし」
神様がそう返事をすると、俺の体はふわりと軽くなった。
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