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正月
そしていよいよ正月がやってきた。俺も神様もオンライン神社にどれほどのアクセスがあるかとそわそわした。正月前からサイトはオープンしていたから、ぼちぼちアクセスはあったが、初詣目的でオンライン神社を訪れる人が増えるのを期待していた。
日付が変わり1月1日になった直後、サイトに書き込みがあった。早速参拝客が現れたようだ。
「投げ銭が来てる。5円か。まあいいや。願い事はなにかな」
オンライン神社にアクセスした人の書き込みを俺と神様でチェックする。あくまでネット上の書き込みだから、人に言える範囲の願い事だ。そんな深刻なものではないだろう。
「大学に合格しますように」
と書かれていた。
「神様、これ叶えられますか?」
神様に聞くと、
「うむ!」
神様は元気よく返事をした。
そのあと、続々と参拝客が現れた。
「彼氏と仲直りできますように」
「頭痛が治りますように」
いちいち「神様、これ叶えられますか?」と聞いている暇もないぐらい、続々と願い事ごとが書き込まれていく。
正月三ヶ日のアクセスはそれなりにあったが、サイトの収入源は小銭の投げ銭とおみくじ代と広告料だけだから、俺が手にしたお金はせいぜい小遣い程度であった。
しかし、神様が参拝客の願い事をすべて叶えてくれればこのサイトはネット上で相当な評判になるだろう。年中無休で参拝客がやってくる有名サイトと化すかもしれない。俺はわくわくして、神様に尋ねる。
「神様、ここに書き込まれた願い事、全部叶えられますか?」
俺がチャットで尋ねると、神様は、
「うむ……叶えようと思えば……叶えられるのだがな……」
と三点リーダー混じりの歯切れの悪い返信をよこした。
「どうしたんですか、神様」
そう入力すると、俺は再びオンライン神社内に意識が飛んだ。俺の目の前立っている神様は、頭を垂れて浮かない顔をしている。一体どうしたのだろう。
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