オンラインを捨てよ 街へ出なくてもいいけど

苦悩

「何かお困りですか」
「ああ。まず、わしはオンライン上の神様じゃ。よって参拝客の願い事のうち、現実に介入しなければいけないことは解決できない。『コロナにかかりませんように』とかな。『パソコンがウイルスにかかるのを防ぐ』とかならできるんだがな……」
「まあそれは仕方がないですよ。オンライン上で解決できる願い事だけでもいいから、叶えてやってもらえませんか」
　俺も参拝客から投げ銭等もらっている身だから、できることなら参拝客の願いを叶えてやってほしいと思い、真剣に頼んだ。
「それがな……たとえばこの『大学に受かりますように』という書き込みをした青年。こいつの願いを叶えるのは簡単じゃ。ネットをやめればいい」
「え？」
「この青年のネット履歴を見たのじゃが、You Tubeの見過ぎじゃ！　教育系の動画ならまだしも、大食い動画ばかり見ておる！　ネットから離れて勉強に集中すれば合格できるのに！」
「あ、ああ……なるほど。勉強しなきゃいけないのにYou Tube見ちゃうとかあるあるです」
　神様は堰を切ったように畳み掛けてきた。
「それからこの『早く彼氏と仲直りできますように』と書き込んだ娘。この娘はラインで彼氏にメッセージを送りすぎじゃ！　それからこの『頭痛が治りますように』と書いた青年はスマホを見ている時間が長過ぎることによる眼精疲労じゃ！」
「つまり……」
「ネットをやめれば幸せになれる、という結論になってしまうのじゃ」
　そもそも、ネット上の神社で初詣をしようとしている人たちなんて、ネット依存気味なのだろう。
「わしはどうしたらいいのだろう。ネットをやめれば解決と言えども、皆がネットから離れるのは嫌なのじゃ！　寂しいじゃないか！　わしは言えん、『ネットを捨てよ、オンラインを捨てよ』だなんて！」