近づく距離

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 美月ちゃんか、ふふ。嬉しいなぁ。名前で呼んで貰えるなんて。なんだか距離が近くなれたような、そんな気がする。  美月は家に帰ると、母親に去年買った浴衣を出してもらった。 「今年も友達と出掛けるのね」 「うん。着付けは友達のお母さんがしてくれることになったよ」 「あら、じゃあ何かお礼しなくちゃいけないわね」  紺色に白色の牡丹の花が描かれた浴衣。合わせて買った白い帯を一緒に持つと、自分の部屋へと運ぶ。 「この袋に入れればいいかな?あと何がいるんだっけ?」  下駄箱を確認すると奥の方に下駄が見えた。他に必要な物を母親に聞くと、出してくれた。 「陽菜も友達と出掛けるって言っていたし、今年もお父さんと二人で見ることになりそうね」  そう、今年こそ本当に友達と花火を見れるんだ。屋台通りを一緒に歩いて、買い物して。楽しみだなぁ。  美月はまだ少し先の予定なのに、明日のことのようにワクワクした。
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