言えない気持ち

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 足元には折れた木の枝や葉があり、急な斜面ということもあって歩くのに苦労した。時々木に掴みながら悠希の後を追う。 「あ、水原さん」 「?」  悠希の指さす方を見れば、そこには二匹の鹿がいた。その姿に驚く美月は思わず小声になる。 「鹿なんているんですね」 「猿も狸もいるよ。見れるなんて水原さんラッキーだな」  美月は携帯を取り出すと、カメラを起動させ画面に鹿をおさめた。鹿はシャッター音に驚いたのか、くるりと向きを変えると走って行ってしまった。 「可愛いです」 「俺も初めて見た時は写真撮ったな」 「家に帰ったら家族に見せます」  登りながらふと上を見れば、高く伸びた木々。葉の間からは太陽の光が零れ落ちて、二人の足元をキラキラと照らす。
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