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何も知らないくせに……。本多くんが私にとってどんな存在なのか。本多くんのおかげであの辛い孤独から抜け出して、今どれだけ幸せなのか……何も知らないくせに。
「本多くんは……私にとって特別な人なの!!本多くんのおかげで私がどれだけ救われたか、お父さん知らないでしょ!?いくらお父さんでも、本多くんを悪く言うのは許せない」
ギュッといつの間にか作られた拳。力が入って爪が食い込む。ふと父親を見ると、とても悲しそうな顔をしていることに気が付いた。
「あ……」
「……高校生になって付き合う友達を間違えたようだ。美月、携帯を出しなさい」
「…………」
美月は言われた通り携帯を取り出すと、テーブルの上に置いた。
「これはしばらく預かっておく。少し頭を冷やしなさい。風呂に行って来る」
ガタンと椅子から立ち上がり、父親は部屋を出て行った。母親は俯いたままの美月を気にしながらも、かける言葉が見つからなかった。
重たい足取りで二階へと階段を上ろうとした時だ。後ろから陽菜が話しかけてきた。
「せっかくの夏休みなのに、しばらく独りだね」
「……なんで嘘をついたの?見てたなら知ってるはず。本多くん意外にも友達が」
「いたね。あと二人」
美月は思わず振り返る。
「なら、なんで……」
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