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それから一週間、美月は父親と話すことはなかった。陽菜はまるで何もなかったかのように、美月に話しかけてきた。笑いかけてくる笑顔が本物じゃないことを知ってしまったから、美月はうまく笑えなくなった。
「今日もお父さんと話せなかった……。携帯も返して貰えてないし」
本多くん、何してるかなぁ?会いたい……顔が見たいよ。
その頃悠希は自分の部屋にいた。じっと携帯画面を見つめている。そこには二日前に送って、未だに既読にならないメッセージが表示されていた。
「……風邪でもひいたとか?」
少しの間考えた後、悠希は美月の携帯番号を開くと、通話ボタンを押した。何コールかして繋がった電話に、悠希は俯いていた顔を上げる。
「水原さん?良かった、LINE全然既読にならないから気になって。体調崩したとか?大丈夫?」
「…………」
「……旅行楽しかったね。また来年も誘うから。今度はさ、今度は」
“二人で行かない?”
「……また晴達も」
「美月はもう旅行には行かない」
「……え?」
「二度と連絡してこないで欲しい」
そう言って電話は切れた。
「…………は?」
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