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「美月ちゃん。お母さんちょっと買い物に行って来るから」
「…………」
ダメだ。お母さんにもこんな態度取るなんて。でもどうしたらいいのか分からない。お父さんも陽菜もお母さんも味方じゃないから。私独りだ……。
『一人?四人の間違いだろ』
「そうだ。私には友達がいる……」
時計を見れば針は四時半を指していた。美月は慌てて階段を駆け下りると、靴を履いた。玄関を飛び出して走って向かったのは、悠希のバイト先だ。
今日本多くんが働いているかなんて分からない。でも今なら、お母さんも陽菜もいない。お父さんが帰ってくるまで、一時間はある。
「はあ……はあ……」
早く、早く。本多くんの所に。会いたいから。会って顔が見たい。声が聞きたい。たった数日のことなのに、連絡が取れないことがこんなにも寂しいなんて。
呼吸を整えようと、走る足を止めた。胸に手を当てながら、思わず呟いた。
「本多くん……」
「呼んだ?」
その声に顔を上げれば、そこに立っていたのは悠希だった。
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