一歩を

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 サッカーのルールはいまいち分からないけれど、シュートが決まればいいんだよね。 「あ!!」  奪われたボールを悠希は簡単に奪うと、そのまま独走状態でゴールを決めた。その瞬間歓声が広がる。 「やったぁ!!さすが悠希!!」  かすみも隣で喜んでいた。美月はシュートを決めた悠希の周りにクラスメイトが集まり、笑顔で肩を組んだりしている様子をただじっと見つめていた。  いいなぁ、本多くんは。いつも人に囲まれていて。男の子も女の子も自然と寄っていって、いつも人の輪の中にいる。本当に私とは正反対だ。そう思ったらなんだか気持ちが落ちてきた。  その後も悠希はシュートを決め、かすみが喜ぶたびに美月の心の中は重たい気持ちになっていった。 「勝ったよー。褒めて、褒めて」 「晴は活躍してないじゃない。でもよく頑張りました」  はしゃぐかすみと晴をよそに、美月は少し離れた所にいた。  なんか……今の私すごく嫌だな。本多くんに対してすごく真っ黒な気持ちになってる。せっかく勝ったのに、素直に喜べてない。こんな私じゃ池田さんも一緒に居たくないって思うかもしれない。
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