一歩を

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 保健室へ入ると先生は不在だったため、悠希はティッシュペーパーを一枚取ると、美月に渡した。 「ありがとう……」  美月はティッシュペーパーで鼻を押さえる。静かな空気の中沈黙を破ったのは美月だった。 「……だから、だから嫌だったんです。誰かと話すなんて」  ダメだ。変わりたいと思ったのは私じゃない。話すって決めたのも私なのに、こんなのただの八つ当たりだ。でも……止まらない。 「人と話して上手くいかなかったから、だから誰とも話さない道を選んだんです。ろくなことがないって知っているから!!苛められるより独りのほうがマシです!!」  美月の声が保健室に響き渡る。 「本気で言ってるわけ?」 「…………」 「変わることがそんなに簡単だと思ってたのかよ」 「……いじめられたことがない人には分からないですよ、私の気持ちなんて」 「……あるよ」
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