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「いつも表情が変わらないので」
「水原さん。何歌う?」
「え?私、ですか?歌はそんなに得意じゃないんですけど」
「いいの、いいの。晴なんてめちゃ音痴だから。カラオケは自己満足。楽しめばいいんだよ?」
「そ、そうなんですね。じゃあ……」
そう言って機械を手にする美月に、聞こえないくらいの声で悠希は呟いた。
「誰のせいだと思ってるんだ」
晴が音痴だというのは本当で、音程は何一つ合っていないのに声だけは大きかった。
「はい、水原さん。マイク」
「は、はい」
入れたのは少し前にドラマの主題歌だった曲だ。緊張しているせいか、マイクを握る手が汗をかいていた。
これは確かに緊張するかも。みんなが聞いているし。あ、でも音楽の授業のテストもそうだよね。あれも緊張するけど、採点こそされないと思えば……。
美月は勇気を出して歌った。
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