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💔
「福山さん春から東京本社だって! うわ〜ん、どうしよ〜沙羅〜」
「まじか。仕方ないよ、仕事出来るもん福山さん」
「だけど寂しいよ、行っちゃったら〜」
入社以来この地方支社に勤め三年になるが、入社当時から仕事を教えてもらい面倒を見てくれた三つ上の福山悠一さんの栄転を本人からこっそりと聞いたばかりの私――岩見メイは抑えられなくなった涙をこそこそめそめそと一人悲しく流すためトイレに来た。だがそこには同期の鈴木沙羅がいて私の顔を見るなり開口一番「どうした?」と聞いていた。
「でもメイが泣いてもどうしようもないじゃん? 早く受け入れな?」
「沙羅が冷たい」
「いや、だってね本人にしたら喜ばしい事だよ? ……あっ、それならさちょうど来週バレンタインだしいっそのこと告白して玉砕してきなよ」
「それ本気で言ってる?」
「うん。絶対それがいい! メイさ高校の時も同クラの山田に告白出来なくてず〜っと引きずってたじゃん?」
沙羅は同期でもあるが、実は高校の同級生で親友でもあった。
当時ずっと好きだった山田くんに好きだと言えず卒業し、告白すれば良かったな、と後悔すること幾数年。やっと吹っ切れたのはここで尊敬する福山さんへの気持ちが好きだと気付いたからに他ならない。
沙羅の言う通り告白せず後悔するのか、それとも告白して玉砕するのがいいか、選ぶならきっと後者だろう。
『やっぱり言えば良かった』と後悔するくらいなら玉砕した方が前に進めるかもしれない。
「私、告白する!」
「よしっ、応援する!」
私たちは目を合わせると深く頷きあった。
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