01・うちの前にいたイケメンくん

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   決してあたしは家事が好きなわけじゃない。母と姉がやらないものだから、仕方なくやっているだけなのだ。  家事だけは卒なくこなしてしまうのがいけないのかも。  コリャーイイヤ。と味をしめちゃっている母と姉が持ち上げてくるのに乗じて、引き受けちゃっているのもいけないのかも。  ・  うちは女所帯だ。周辺アパートだらけの中でのぽつんと一軒家。に、三人だけで暮らしている。  父は病死した(らしい)。一緒に過ごした記憶なんかないけれど、写真やビデオがなんとか残っているからそうなんだ、と納得はしている。  でも悲しいことに、父を恋しく思ったことなど一度もない。  逆に会いたくて愛おしいのは祖父だ。  五年前の亡くなる直前まで一緒に住んでいて、仕事ばかりの母に代わってたくさんかまってくれた祖父。  幼すぎて何も知らなかったんだけどうちの祖父、アパートや土地をいくつも所有してひとに売り貸ししていたらしい。  不動産のむずかしいことはさっぱりだから詳しいことは省くけれど、いまは母がそれを引き継いでいる。祖父のかわりに母が、アパートのオーナーとして、賃貸借契なんちゃらを結んでくれたひとから家賃をいただいている。  あたしたち女家族はいま、それで生計をたてているのだ。
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